ワークショップ 報告

森林を活用した職員のメンタルヘルス研修会

10年間、森林散策カウンセリングの研究調査に協力していただいている行政で、
このたび、職員を対象とするメンタルヘルス研修会を実施いたしました。
画期的ですね。

今回は、初の試みということで、安全衛星委員会関連の職員さん方が対象です。
日頃、デスクワーク中心ということもあり、健康づくりのために、
まずは、職場から現地まで歩いて集合しました。

皆さんとお会いした時、既に、お疲れの職員さんもいらっしゃいましたが(笑)、
一呼吸をした後、開催の挨拶と気分調査票の記入を行い、森の中へ入っていきます。

日頃から自然豊かな地域で働いている皆さん。
いつも見慣れている山の風景ですが、針葉樹や広葉樹、またスギやヒノキの樹形の見分け方を伝えます。
すると、「あ、ちがう」「なるほど」「そんな風に見たことがなかった」という声がちらほらと。

そして、足元には、クルミやドングリ、クリなどが落ちていることを伝えると、

 

「ほんとだ!」「あ、クルミ!?」「わぁ~」などの声があがります。

さらに、イノシシが荒らした痕跡やシカのフン、道の至る所にけもの道があることを伝えると、
「イノシシ?」「わっ、シカがいるんですね」「あ、ここにも足跡が!」などと
色々なものに関心が示され始めます。

そうすると、「ここの土はふかふか~」「あ~気持ちいい」「昔、遊んだなあ」などの
会話も聞こえてくるようになりました。

森の様相は、落葉広葉樹から常緑針葉樹の林分に変化していきます。
そこで、皆さんの印象を聞いてみると、
「みんなまっすぐ」「静か」「暗い」「なんか寂しい」などの答えが。
感性の鋭さに感心しますね。

ここは、もともと落葉広葉樹だったところを人の手でスギやヒノキに植栽されました。
今は、管理され始めましたが、それまで長い間放置されたままになっていたこと、
そして、このような森林が日本各地でたくさんあることなども伝えていきます。

それから、10分間のリラクセーションです。

皆さん、笑顔で敷物を広げていきます。
そして、五感を活用して、仰臥中、色々なことを感じとってみてください、と伝えます。

すると、不思議なことに、いつも大勢の人がいると警戒して現れないキツツキ達が姿を現し、
きれいなさえずりと「コンコンコン」という木をつつく音を奏でてくれました。

最後は、セルフカウンセリングシートと気分調査票を記入してもらい、
事前に、職場で書いてもらったセルフカウンセリングシートと
散策前の気分調査票を各自比較をしてもらいます。

「キツツキがいた」「ぶ~んという虫が飛んできた」
「子どもの頃を思い出した」
「前向きになった」「今の自分でいいと思った」
「いろいろと思い悩んでいたけれど、それがなくなった」
「子どもの顔を思い出した」など、さまざまなコメントや変化がありました。

今回の研修会では、森の中で過ごした時間は1時間30分程度です。
それでも、仕事のオンとオフの気分転換を体験し、自分自身を肯定した気持ちになったり、
物事に意欲的になったりできたようです。

職員を大事にする行政って、素敵ですね。
そして、そこに住む人々は、さらに安心できるのではないかと思いました。
私自身、皆さんと非常に良いひと時を過ごすことができたこと、感謝申し上げます。

※セルフカウンセリングシートは提出せず、各自の秘密文書です。
※気分調査票は、PANAS日本版(その時のポジティブ感情とネガティブ感情を把握する気分評価です)を用いました。
こちらは、散策前に比べ、散策後にポジティブ感情とネガティブ感情が改善されましたが、特に、ネガティブ感情は有意に改善されました。

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